書道における隷書とは?読み方、歴史、特徴などを知っておこう

図書館 開かれた本

「隷書」は書道の書体のひとつです。名前は聞いたことがなくても、字体を見れば「見たことがある」と感じる方は多いと思います。なぜなら、日本円のお札で使用されている書体だからです。

今回はそんな「隷書」について、読み方、歴史、書体の特徴などについてご紹介します。書く際のコツについても解説しますので、ぜひ参考にしてください。

隷書とは

「隷書(れいしょ)」は、篆書・楷書・草書・行書など合計で5種類ある代表的な書体のうちのひとつです。こちらでは、隷書が使用されている場面や隷書の歴史についてご紹介します。

隷書は日本円紙幣の「日本銀行券」「壱万円」で使われている書体

隷書という書体の名称は聞いたことがなくても、日本円のお札で大きめに使用されている字が隷書であることを聞けば、多くの方が見たことはあると納得されると思います。日本円紙幣に印刷されている文字のうち、「日本銀行券」と「壱万円」「五千円」「弐千円」「千円」などが隷書体です。

ほかにも、次のような多くの場面で隷書は使われています。

 

隷書が使われているもの、使われることの多い場面

  •  日本円の紙幣に印刷されている文字「日本銀行券」「壱万円」など
  •  新聞や本の題字、タイトル(読売新聞、朝日新聞など多数)
  •  建物の表札(東京芸術大学など多数)

 

このように、実は世の中で意外にも多くの場面にて使われている隷書ですが、長い歴史の中で姿を変えてきた書体でもあります。次の項目では、そんな隷書の歴史について解説していきましょう。

隷書の歴史

始皇帝の時代に、裁判所の職務が繁忙になったことで、それまでの書体であった「大篆」を簡略化した「秦篆(小篆)」という書体が制定されました。これら2種類の書体はまとめて「篆書」と呼び、隷書・楷書のもとになっています。

前漢の簡牘に「八分」というものが存在し、後漢になってこれが様式化した「八分隷」の石刻がつくられました。一般的に「隷書」というと、この後漢の隷書を代表格とみてよいでしょう。そして清の時代、金石の研究がすすむと同時に、多くの名家によって隷書の作品が書かれました。

隷書体の資料は中国の戦国時代晩期のものが存在し、筆画が簡略化したものや、波磔のみられない「古隷」といわれる前漢初期のものが多数出土しました。

隷書の4つの特徴

篆書の次に古い歴史をもつ隷書体には、主に次の6つの特徴があります。

 

隷書の特徴6つ

  •  扁平な字形
  •  払いの形は三角形になる(波磔)
  •  起筆と収筆は穂先を包み込むような書き方(蔵峰)
  •  横画は水平、縦画は垂直の字形で左右対称が原則

 

それぞれわかりやすく解説していきましょう。

扁平な字形

隷書が全体的に平べったい印象のある字形となったのは、記録する媒体として木簡・竹筒などが使われていたためだといわれています。また、線が曲がる箇所は角張っている(方筆)のも特徴でしょう。

払いの形は三角形になる(波磔)

波磔(はたく)が存在するのも、隷書ならではの大きなポイントだといえます。波磔とは、横の線の終わり部分や、左右の払いの形が三角形になることです。ただし、隷書における波磔は一字に一箇所のみという決まりがあります。つまり、ひとつの文字の中でもアクセントを置きたい場所にのみ波磔という技法を使います。

起筆と収筆は穂先を包み込むような書き方

隷書では、書きはじめで穂先を線の中に隠しながら筆を進める形(逆筆、蔵鋒)をとります。また、線の真ん中を通るように筆の穂先を動かす中鋒の形もとりますので、書き終わりも丸くなります。

横画は水平、縦画は垂直の字形で左右対称が原則

隷書体は基本的に左右対称で水平です。横線、縦線が重なる箇所では、線と線の間が等しくなりますので、全体的にバランスがとれている字形だといえるでしょう。

まとめ

「隷書(れいしょ)」は、最も古いといわれる篆書の次に歴史の長い書体です。画数の多い篆書を、書きやすくするために効率化された書体でもあります。日本に伝わった後、日本円の紙幣や新聞の題字、建物の表札など格式を感じさせるものに、隷書は多く使われています。そんな隷書を書く際には、一番の見せ所である波磔をうまく活かすのがポイントです。

隷書を習ってみたい、書道展へ出展したいといった方は、まずは書道教室で基本から習ってみるのもオススメです。書道研究 尚美社では、日展特選受賞作家である一流プロが指導しております。初めての方でも丁寧に指導いたしますので、無料体験からはじめてはいかがでしょうか。