草書は高い芸術性が求められる書体です。そして硬筆書写検定で必須であったり、コンクールで多く使われたりする書体でもあります。日常生活であまり目にすることがない書体ですので、「草書」と聞いて、その書体をパッと思いつく方は少ないかもしれません。
今回はそんな草書について、概要や歴史、書くときに知っておきたいポイントなどを解説していきます。
草書とは
「草書(そうしょ)」は、書道の基本となる5つの書体(篆書・隷書・楷書・草書・行書)のうちのひとつです。現在、草書は和食店などの看板で見かけるくらいですので、日常的には馴染みのない書体だといえますが、実は草書はひらがなのもとになった書体なのです。
草書はひらがなのもとになった書体
漢字は中国から日本へ伝わったもののひとつです。その後、漢字の草書である草仮名の画数が多いために簡略化され、さらに字形が崩されたものがひらがなに発展したといわれています。ひらがなが漢字を由来にしていることは学校で学習しますが、「草書からひらがなに発展した」ということまではご存じない方も多いかもしれません。
書くのが難しいといわれる草書も、ひらがなのやわらかさを意識することで書きやすさがアップするのは、こういった所以があるためなのです。
草書の歴史
それでは、草書自体がどのような歴史を経てきた書体であるのか見ていきましょう。書道の基本となる5書体は「篆書→隷書→草書→行書→楷書」という順番に生まれたといわれています。隷書を早書きするために、中国の前漢の時代に生まれたのが草書です。草書は後漢の時代に広く普及するようになりました。
1文字をほとんど一画で続けて書き、曲線が多い字形として成立したことから、後ほど日本語のひらがなに通じていくことにも頷けるものがあります。
草書の特徴
隷書を早書きすることを目的に生まれた草書は、5書体の中で最も滑らかに書くことができる書体であるだけでなく、高い芸術性も兼ね備えています。そんな草書の特徴をまとめてみました。
草書の4つの特徴 |
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それではひとつずつ詳しく解説していきましょう。
点画の連続で極限まで画数が少なくなっている
本来は早書きを目的としている書体のため、一点や一画が極限まで省略されています。また、次の一画へ移る際にも筆を離さずにつなげて書くことが多いです。
固定された字形はなく、筆者によって個性が出る
草書には固定された字形が存在しません。習い事の場合、お手本はありますが、必ずしもそれに従わなければならないわけではありません。同じ文字でもその崩し方はさまざま可能ですので、筆者によって個性が出るのが大きな特徴です。
流動美をもつ芸術性の高い書体
草書の対極は楷書です。一点一画を離して書く端正な字形の楷書は、いうならば「構築された美」をもつています。対する草書は一点一画をつなげて流れるように書くことから、流動美をもつ字形だといえるでしょう。
また、その高い芸術性により読めないことも多いのが草書ならではのもち味でもあります。そのため、実用には向いていない書体だといえます。
旋回運動により多彩な曲線で表現する
草書では、点をつなげて書いたり、線をできるだけ省略したりという方法で、字を簡略化します。その結果、曲線が多くなりますので、筆を旋回させて書いていくことになります。多彩な曲線による美しさが、草書の最大の魅力です。
草書を書くときの4つのポイント
美しくも個性的な草書は、読むことだけでなく書くことも難しい書体です。そんな草書を書く際の主なポイントは次の4つです。
- ひらがなの草書はその成り立ちを理解することからはじめる
- 崩し方の解説も勉強してからいざ練習へ
- 流れるように書く
- 字形が大きく崩れているものは書き方を丸ごと覚える
まずポイントとなるのは「ひらがなの草書の場合、もととなる漢字がどのようなものであったかを把握していること」です。字形の成り立ちを理解しておくことで、自身が何を書いているのか、どのように書くべきなのかが把握でき、格段に書きやすくなります。
また、字形が大きく崩れる難解な文字に出会うこともあります。そんなときはあまり難しく考えず、まずは書き方を丸ごと覚えてみることをオススメします。
まとめ
「草書(そうしょ)」は、書道の基本となる5書体のうちのひとつであり、日本語のひらがなの由来となっている書体でもあります。中国の秦の時代に発展した隷書体を早書きするために、前漢の時代に生まれたのが草書です。そのため「1文字をほとんど一画でつなげて書く」という大きな特徴をもちます。
その高い芸術性により読むこと・書くことが難しい草書の修得は、独学よりも書道教室などでプロによる指導を受けるのがオススメです。書道研究 尚美社では初心者の方から段取りやコンクールへの出展を目指す方まで広く歓迎しております。ぜひお気軽にご相談ください。