日常的に使う漢字は約2,000文字あるといわれており、なかにはバランスが取りづらく書きにくい漢字も多く存在します。書きにくい漢字は、一画ずつ意識することで美しく書けるようになるのです。今回は、書くのが難しいといわれることの多い「之」の正しい書き方について解説していきます。
「之」の詳細
「之」は、「し」「これ」「の」の読み方がある3画の漢字です。単体では男性の人名に使われることが多いので、ビジネスシーンの宛名書きなどに遭遇することが多いかもしれません。バランスの取りにくい「之」を美しく書けるよう、正しい書き方をマスターしましょう。
「之」の正しい書き方
「之」を美しく書くためには、一画ずつ意識するのが大切です。正しい書き順とそれぞれの注意すべきポイントを見ていきましょう。
1画目:点を書く
「之」の1画目は、一番上にある短い点です。点の位置で字のバランスが決まってしまうので、たかが点と思わずに慎重に書く必要があります。1画目の点は、縦の中心かつ上部1/4に位置する場所に書きましょう。点を下に書きすぎると、つぶれた形の「之」になってしまうので注意してください。
点の角度は、右斜め下45度にすることで美しく見えます。横や縦にまっすぐ書くと、見栄えが悪くなるので注意しましょう。
2画目:「フ」を書く
「之」の2画目は、「フ」の形をした部分です。2画目は1角目の点から少し離れた場所から書きはじめ、折り返すときは三角形のスペースをできるだけ狭くしましょう。スペースを広くすると文字が縦長になってしまうので、できるだけ狭くすることが美しい「之」の書き方です。
書き始めは左の1/4程度の場所に設定し、やや右上がりの横線を右の1/4程度の場所まで書いていきます。折り返したあとの書き終わりは、書き始めの位置まで戻すことがポイントです。折り返したあとの線は、まっすぐ書くのではなく少し膨らませることで美しく見せることができます。
3画目:横線を書く
「之」の3画目は、一番下の角度がついた横線です。3画目は「之」にとって非常に重要なポイントになる場所であり、最後のはらいが曲線的だとひらがなの「え」のような形になってしまいます。直線的にはらいを書くよう、意識することが大切です。
3画目は、2画目の書き始めよりさらに左から書きはじめましょう。最初は右上がりで線を書き、2画目とぶつかったら右下がりにし、3画目の書き始めより下の位置に来たらやや右上がりにはらいます。1・2・3のリズムで直線的に書くことで、美しい「之」が書けるようになります。
「之」の美しい書き方のコツ
「之」を美しく書くためには、一画ずつのポイントを意識することが大切です。ただし、一画ずつだけに意識しすぎると、全体のバランスが悪くなる恐れもあります。「之」の美しい書き方のためには、上記に合わせて以下の3つのコツも意識しましょう。
- 三角形を意識する
- 字全体を横長にする
- ひらがなの「え」にならないように気をつける
三角形を意識する
美しい「之」の形のポイントは、全体が三角形になっていることです。下に向かうほど広くなるようにバランスを取ることで、自然で美しい「之」を書くことができます。三角形にならない場合は、3画目が短すぎたり反対に2画目の横線が長すぎたりすることが考えられます。一画ずつ慎重に書きながら、全体のバランスにも意識を向けましょう。
字全体を横長にする
お手本を見てもわかるとおり、「之」はやや横長の形をした漢字です。2画目の折り返しでスペースを取りすぎると、字が縦長になってしまい美しく見えません。字が横長になるように、なるべく縦を圧縮させることを意識しましょう。2画目をカタカナの「フ」よりもつぶし気味に書くことで、横長の形をキープできます。
ひらがなの「え」にならないように気をつける
「之」は漢字の「え」と似ている形をしており、実際に書くときも「え」のように書く人が多いです。しかし、実際の「之」は直線的なので、「え」のように書くと美しく見えません。「え」のように見える原因のひとつが、3画目のはらいです。はらいが曲線的になるとひらがなっぽくなってしまうため、直線的にはらうことが大切です。
まとめ
人名でよく使われる漢字の「之」は、宛名を書く際などに出くわすことの多い漢字のひとつです。「之」はバランスが取りづらく書きにくい漢字だといわれているので、一画ずつ丁寧に書いていくことが重要です。今回紹介した書き方のコツを参考に、美しい「之」の書き方をマスターしてください。
漢字には「之」以外にも書きづらいものが多く、すべてを独学でマスターするのは簡単ではありません。「之」以外にも美しい文字を書きたい人は、東京・自由が丘にある書道研究 尚美社にご相談ください。プロの書道家が、目的にあった本格的な指導をいたします。興味がある人は、お気軽にお問い合わせください。