ペン字(ボールペン字)を習っていると、どのくらいの実力がついたのか試したくなるものです。実は、筆による書道に級や段位を取るシステムがあるのと同様に、ペン字やボールペン字などの硬筆でも級を取ることが可能です。
今回は、美しい文字の実力を証明することができる硬筆検定のひとつ「硬筆書写技能検定」について、概要や級の種類・レベル、合格基準、受けるメリットなどについて解説していきます。受験する際に注意したいポイントについてもご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
硬筆書写技能検定とは
ペン字の実力を示すことができるペン字検定は、2023年時点で「日本書道協会技能認定制度(ユーキャン)」「日本書道学院師範認定試験(日本ペン習字研究会)」「硬筆書写技能検定」といったさまざまなものが存在します。ただし、前者2つは各通信教育や各教室で異なる基準を設けているものとなり、公的な資格として履歴書などに書くことは難しいです。
その点「硬筆書写技能検定」は、文部科学省後援のペン字検定ですので、合格すれば履歴書に記載することができます。そこでこちらでは、硬筆書写技能検定に焦点を当てて詳しく解説していきます。
国内で唯一公的性をもつペン字検定
硬筆書写技能検定試験は、文部科学省の後援を受けて一般社団法人日本書写技能検定協会が主催しているペン字の検定試験です。こちらの団体では、硬筆と同時に毛筆(書道)での書写技能検定試験も実施しています。
文部科学省をはじめ、全国高等学校校長協会、全国連合小学校校長会、各都道府県・市区町村の教育委員会などが後援しているということで、国内で唯一の公的性をもつペン字検定となっています。検定試験は年3回、全国の各都市で開催されますので、受験できるチャンスは多いといえるでしょう。
受験資格は特になし
硬筆書写技能検定試験の受験資格について、学歴や年齢、性別などの制限は設けられていません。「自身のペン字の実力を知りたい」「ペン字の資格を取得したい」など、やる気のある方であればどなたでも受験のチャンスがあります。
受験の申し込みは、書道教室や学校だけでなく、個人でも可能です。また、初心者でも難しい級を受けることができます。ただし、すべての級が同時におこなわれますので併願はできません。自身のレベルに合わせた級から挑戦することができるのも特徴のひとつです。
級の種類とレベル
硬筆書写技能検定試験では、独自の審査基準によって6~3級・準2級・2級・準1級・1級という8つの等級が設けられています。各級のレベルもあわせてご紹介します。
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書写レベル |
受験レベルの目安 |
試験内容 |
---|---|---|---|
6級 |
最も初歩的な技術が必要 |
小学校1~3年生程度 |
実技のみ |
5級 |
初歩的 |
小学校3年生以上程度 |
実技+理論(筆順) |
4級 |
基礎的 |
中学生・高校生程度 |
実技+理論(筆順・書き取り) |
3級 |
一般的 |
実技+理論(漢字の字体を含む) ※理論のみマークシート |
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準2級 |
やや専門的 |
高校生・大学生 一般社会人程度 |
|
2級 |
専門的 |
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準1級 |
より専門的 |
実技+理論(書道史を含む) |
|
1級 |
高度な専門的技術が必要 |
大学生・一般社会人程度 |
合格基準
硬筆書写技能検定の合格点と最新の合格率(令和3年度第3回)は、次のとおりです。
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合格点 |
合格率 |
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---|---|---|---|
6級 |
実技235点以上/400点満点中 |
97.4% |
|
5級 |
実技+理論=295点以上/500点満点中 |
96.2% |
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4級 |
実技+理論=460点以上/700点満点中 |
88.4% |
|
3級 |
実技415点以上/600点満点中 |
理論275点以上/400点満点中 |
63.8% |
準2級 |
実技415点以上/600点満点中 |
理論275点以上/400点満点中 |
57.5% |
2級 |
実技415点以上/600点満点中 |
理論275点以上/400点満点中 |
60.1% |
準1級 |
実技415点以上/600点満点中 |
理論275点以上/400点満点中 |
16.4% |
1級 |
実技415点以上/600点満点中 |
理論275点以上/400点満点中 |
9.2% |
硬筆書写技能検定を受けるメリット
文部科学省後援の硬筆書写技能検定に合格することで得られる主なメリットは、4つあります。
硬筆書写技能の合格で得られる4つのメリット |
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各種学校の入試で内申点に加点されるなど、合否判定で優遇を受けられます。また、入学後に「硬筆書写技能検定2級→書道Ⅰ/1単位」といった増加単位の認定を受けられるケースも増えてきています。
1級の合格者には「指導者証」が交付されます。こちらは、ペン字や書道の教室を開く際に、優秀な指導者としての証明に利用可能です。
硬筆書写技能検定を受験する際の注意点
硬筆書写技能検定を受験する際には、次の2点にご注意ください。
硬筆書写技能検定を受験する際の2つの注意点 |
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各問で使用する筆記用具が指定されていますので、試験の内容を確認して準備する必要があります。たとえば一般的なボールペン・鉛筆はOKですが、筆ペン・先が四角い油性マーカーはNGなどです。
硬筆書写技能検定の3級までは例年、受験者の約6割以上が合格を勝ち取っていますが、ここから上級では合格率がどんどん下がっていきます。各級で試験時間も設定されているため、制限時間以内に全問を解けるよう練習を重ねる必要があります。上級を狙う方は、教室等で指導を受けるのがオススメです。
まとめ
硬筆書写技能検定は、国内で唯一の公的性があるペン字検定です。合格すると履歴書や内申書へ記載できるなど、メリットも多いですので、興味のある方はぜひ挑戦してみてください。
2級以上を狙う場合には、検定指導の経験豊富な書道教室で習うことをオススメします。書道研究 尚美社では、生徒の方がそれぞれ目指す目標に合わせて、一流のプロが丁寧に指導いたします。お気軽にご相談ください。