流れるような美しさをもつ行書!その歴史や書き方のコツを解説します

行書の習字を書く様子

「行書」は楷書の字形を少々崩した感のある書体です。日常生活でも書いたり見たりする機会も多いですので、書き方のコツを知っておくと、さまざまなシーンで役立ちます。

今回はそんな行書の歴史や主な特徴、書き方のコツを解説していきます。ぜひ参考にしてください。

行書とは

「行書(ぎょうしょ)」は、書道の基本といわれる5書体(篆書・隷書・楷書・草書・行書)の中のひとつで、隷書から派生したものです。日常生活では、お店の看板やのれんなどでよく見かける書体でもあります。これは行書が流れるような美しさをもつだけでなく、読みやすいという特徴ももっているためでしょう。

行書はもっとも実用性の高い書体

行書は、前述の5つの書体の中でも一番実用性が高い書体であるといわれています。点や線を連続させることで早書きを実現しますが、元の字形がわからないほど崩れるというわけでもありません。

行書が書けるようになれば、次のような場面で重宝します。

 

  •  手紙や挨拶文を書くとき
  •  履歴書を手書きで書くとき
  •  住所や氏名を書くとき

 

葉書や手紙などで見かける達筆な字は、実はそのほとんどが行書です。そのため、行書の書き方を覚えておいて損はありません。

行書の歴史

行書が生まれたのは、中国の後漢の時代です。5つの書体のうち最初に生まれたのが篆書で、次にこれを書きやすく簡略化した隷書が生まれました。その後「隷書→草書」と「隷書→行書→楷書」という2つの派生の流れがあり、隷書と草書の両方の長所をあわせもつ書体として行書が誕生しました。

実際には、行書は楷書よりもほんの少々先に生まれたとされています。行書は楷書を崩した文字のようなイメージがある方も多いと思いますが、歴史的に見てみると、行書からさらに読みやすい楷書が派生したことがわかります。

行書の6つの特徴

隷書体から派生した行書の特徴としては、次のようなものが挙げられます。

 

行書の6つの特徴

  •  楷書より書きやすい
  •  点、線が曲線的になっている
  •  点、線が連続することもある(例:然、熊、春、書など)
  •  書き順が異なる場合がある
  •  点や線を省略する場合がある(林、門など)

 

行書では、点や線は曲線的になり、時にはこれらを連続して書いたり、省略したりすることがあります。たとえば「然」などの漢字の4つの点(火部)は連続して書かれ、「春」などの連続した横の線はつなげて書かれます。また、木へんの2つ目のはらいは省略されることが多いです。また、書き順や止め・跳ねの形が変化する場合があるのも大きな特徴でしょう。

行書では点や線を連続させて書くため、楷書よりも書きやすいです。そして字形の簡略化で書きやすくされた書体ですが、草書ほど大きく崩れていません。書きやすく読みやすいのが行書という書体であると考えてください。

草書との違いとは

同じ隷書から派生した草書と行書。どちらも流れるような美しい字形ですが、次のような違いがあります。

 

  •  見た目は草書のほうが大きく崩れている
  •  草書のほうが曲線が多く、点や線の省略も草書のほうが多い
  •  草書よりも行書のほうが読みやすい

 

見た目が流動的で美しくても読めない場合には「草書」、きちんと読める場合には「行書」だと判断できます。

行書を書くときのコツ

行書の流動的な美しさをうまく表現するためには、筆脈を意識することが大切になってきます。筆脈とは「実際にはつながっていない部分における気持ち的なつながり」のことです。行書では点や線をつなげて書く場面が多いですが、つながっていない箇所についてもつながっているような気持ちで書くことで、自然な美しさとなります。

書きはじめ(始筆)は軽く入るのが行書の基本です。力強く入ると、楷書に近くなってしまいます。入りを軽めにすることで、行書ならではのやわらかい曲線的な字形となります。角も丸みをもたせて書きましょう。

ぜひ次の5つのコツを押さえて、行書に挑戦してみてください。

 

  •  筆脈を意識しながら流れるように書く
  •  始筆は軽く入る
  •  2つの点、線は一筆書きをする
  •  転折(角)は丸くする
  •  細い線は、見栄えよくするために短く書く

 

まとめ

行書(ぎょうしょ)は隷書から派生した書体であり、その書きやすさと読みやすさから、もっとも実用性の高い書体とされています。草書に似た流動的な美しさをもちながらも、早く書けるというメリットがあるのが特徴です。

行書を美しく仕上げる主なコツは、筆脈を意識して、始筆は軽く入り、角は丸みをもたせることです。行書は、手紙や挨拶文、履歴書、住所や氏名などを手書きする際に役立ちますので、書き方を覚えておくことをオススメします。

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