書道の書体のひとつである「篆書」。数ある書体の中でも、デザイン性が強い印象のある書体だといわれています。
今回はそんな「篆書」について、読み方や歴史、書体の特徴、書き方のポイントなどを解説していきます。これから書道を習いたい方、出展を考えている方など、作品の書体を選ぶ際の参考にしてください。
篆書とは
「篆書」は「てんしょ」と読みます。代表的な書体には、篆書を含め隷書・楷書・草書・行書など合計で5種類あり、その中でも篆書はもっとも古い書体であるといわれています。こちらでは、篆書が使用されることの多い場面や、篆書の歴史について詳しくご紹介しましょう。
篆書はパスポートの表紙で使われている書体
篆書は、ものの形から出来上がった象形文字がもとになっている書体です。実印としてもっとも使われることの多い書体でもあり、パスポートの表紙の文字をはじめとする、次のような場面で使われています。
篆書が使われているもの、使われることの多い場面 |
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篆書の歴史
ひと口に篆書といっても、使われていた時間は約1,000年にも渡る長期の中で文字の形や種類が変わっていきます。また、国土の広い中国では、地域ごとに言語に方言があるように文字の姿も違います。
大まかに分類すると、文字の始まりである甲骨文、青銅器に鋳込まれていた金文、印や銅印で使われていた古鉥や印篆、秦の始皇帝時代に統一整理された小篆などがあります。使われていた期間も長大なので、それぞれ違う書体であると認識すべきでしょう。これらを総じて今日では、篆書とくくっています。
篆書のもうひとつの種類である「印篆」は、篆書体を印鑑の方寸に収まるように改変されたものです。現在実印などでよく使用される書体は、こちらの印篆体となります。
篆書の特徴は5つ
もっとも古い歴史をもつといわれる篆書体には、次のような特徴があります。
篆書の特徴5つ |
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ひとつずつ詳しく見ていきましょう。
線の太さが一定になっている
文字の線の太さが常に一定であることが、篆書体の大きな特徴のひとつです。はらいや止めなどの部分でも、線が細くなったり極端に太くなったりすることはなく、常に同じ太さとなります。
縦長の字形で左右対称が原則
典型的な篆書体は縦長が基本です。また、原則として、長さや間隔が左右対称となります。
起筆は穂先を包み込むような書き方で
篆書では、書き始めで穂先を線の中に隠す形(逆筆)をとります。また、筆の穂先が常に線の中央を通るようにする(中鋒)のも特徴です。つまり、筆先の形が筆跡に残らないようにする筆法を使います。
連なる線の間は等しい間隔になる
横線、縦線などが重なる部分では、それらの線の間は等しい間隔になるように筆を動かします。
線が曲がる箇所は丸みを帯びている(円筆)
篆書のどことなくやわらかいイメージは、線の曲がり角(転折)が角張らずに丸みを帯びていることも要因となっています。線が曲がる箇所を丸く書くために、この部分は一画で書きます。このような円筆の形をとるのも篆書の特色だといえるでしょう。
篆書を書くときのポイントとは
歴史的にも一番古く、象形文字から発展した経緯をもつ篆書。篆書は文字数が増えれば増えるほど、どのような字を書いているのか混乱してしまうこともあります。そのため篆書を書く際には、文字というよりは「記号や絵を描く」という感覚で臨むといいでしょう。
また、具体的なポイントとしては、原則次のような点も挙げられます。
- はらいを意識する必要がないため、ゆっくり書ける
- 線の太さを一定にするように気を付ける
- 字形を左右対称にする
最初は戸惑うこともあると思いますが、まずは習った通りの筆順を守ってゆっくり書き始めてみることをオススメします。
まとめ
「篆書(てんしょ)」は、代表的な5書体のうちのひとつであり、その中でももっとも古い書体であるといわれています。また、線の太さが一定になっている、左右対称の縦長字形、起筆は穂先を包み込むような書き方、連なる線の間は等しい間隔になる、丸みを帯びた転折といった特徴が挙げられます。
大変特色のある書体ですので、篆書を書く際には、文字というよりも「記号や絵を描く」という感覚で臨むのもオススメの方法です。
書道の段取りを目指している方や、今後書道展への出展で篆書体の作品を考えている方は、書道教室などでプロによる指導を受けるのもオススメです。書道研究 尚美社では、一流の書家による本格指導をおこなっており、月に何度指導を受けてもお月謝は一律となっています。ぜひお気軽にご相談ください。