字体と字形はどう違う?書道で扱う5種類の書体についても解説します

ハテナのブロックとペン

書道やペン字を習っていると、さまざまな専門用語や書体に出会います。そこで「字体と字形はどう違うものなの?」「書道の書体5種類にはどんなものがあるのかわからない」といった疑問をもつこともあるかと思います。

今回は、書道を習う上で出会う専門用語、5種類の書体について解説していきます。

書道の専門用語の意味を理解しておこう

字体や字形、書体や書風といった書道の専門用語は、実は日常的な話し言葉でもよく使われる言葉です。しかし、これら2組の言葉は響きが似ているため、意味を混同してしまっていたり、よく意味を把握せずに使ってしまっていたりすることがあります。

書道を習う上でも、これらの言葉の具体的な意味を理解しておくことは大切です。知識として身につけ、しっかり使いわけられるとよいでしょう。

「字体」と「字形」の違い

字体と字形は、似ているようで実は大きく意味が異なる言葉です。平成28年に文化庁が発表した常用漢字表についての報告書によると、双方の言葉は次のように定義されています。

 

  •  字体…文字を文字として成り立たせている骨組みのこと。~字体の枠組みから外れていなければ、その文字として認められる。
  •  字形…字体が具現化され、実際に表された一つ一つの字の形のこと。

引用:文化庁「常用漢字表の字体・字形に関する指針(報告)について」


それぞれわかりやすく説明していきましょう。まずは「字体」について、文字の点画からなる骨組み自体のことを指します。具体的にいえば、漢字には正字体と旧字体など見た目が一部異なるけれども同じ意味をもつ漢字があり、たとえば「芸術と藝術、慶応と慶應などは、それぞれ字体(骨組み)が異なる」という表現をします。

これに対し「字形」は、字体が実際に表記された文字の形のことを指します。たとえば「こちらの履歴書は字形が整っていてすばらしい」といった表現で使用されます。

「書体」と「書風」の違い

書体と書風も、響きが似ている言葉ですが、意味するところは以下のように違っています。

 

  •  書体…文字の形に関する特徴のこと。点画構造など表現の体系を指す。
  •  書風…書道の流儀のこと。書き手の個性により変化するもの。

 

文字には、その時に求められる状況に合わせて幾度も変化をしてきたという長い歴史があります。その過程で生まれた異なる装飾をもつ文字のことを表す言葉が「書体」です。後ほど詳しく解説しますが、書体には隷書や楷書といった5つの種類があります。

対する「書風」とは、文字から醸し出される趣のことを指します。書風は、書く人の筆圧、癖、使用する道具などにより反映されるものです。つまり、「書風=書きぶり」となります。

漢字における基本的な5書体とは

書道の基本となる5つの書体について知っておくことで、書く際の気の持ち方や気合いの入り方が変わります。書道やペン字を習う方は、ぜひ知識として身につけておきたいものです。5書体について、生まれた順では「篆書→隷書→草書→行書→楷書」とされていますが、習う順番としては「楷書→行書→草書」がよいともいわれます。では、歴史が古い順にそれぞれの書体の特徴を説明していきましょう。

篆書(てんしょ)

中国で4000年ほど前に現れた原始的な文字が、周の時代に「大篆」へと発展し、後の秦の始皇帝の時代に簡略化されて「小篆」という書体が生まれました。現代でいわれる篆書とは「小篆」のことを指します。

現在では、篆書はパスポートの表紙「日本国旅券」の文字や、日本円の紙幣にある印影、多くの実印などで使用されています。丸みがあり図形のような見た目が特徴です。

隷書(れいしょ)

隷書は、画数の多い小篆を書きやすくすることを目的として、これを簡略化して生まれた書体です。現在では、日本円紙幣の文字「日本銀行券」「壱万円」や、東京芸術大学といった建物の表札など多くの場面で使用されています。

書体の特徴としては、はらいの形が三角形になる「波磔」をもつていること、水平性・垂直性を重視することによる厳粛さや威風感、力強さなどが挙げられます。

草書(そうしょ)

草書は、隷書を早書きするために前漢の時代に生まれた書体です。のちに日本語のひらがなに発展した書体であるともいわれています。

現在では、和食店などの看板で見かける程度となり、日常的にはあまり馴染みのない書体ですが、硬筆書写検定やコンクールなどではよく見られ、高い芸術性が問われる書体となっています。特徴としては、読みにくい、固定された字形が存在しない、極限まで画数が少なくなっている、流動美をもつ、といったものが挙げられるでしょう。

行書(ぎょうしょ)

行書は、隷書と草書の両方の長所をあわせもつ書体として、後漢の時代に生まれました。流れるような美しさがありながらも読みやすく書きやすいため、5書体の中で最も実用性の高い書体となっています。

現在では、手紙や挨拶文、履歴書、お店の看板など幅広い場面で行書が使用されています。行書をうまく使いこなせれば、さまざまな場面で重宝します。

楷書(かいしょ)

楷書は、隷書を簡略化した行書から派生し、7世紀の唐の時代に確立された書体です。現在、日本において公的な書類などで最も多く利用されているのが、こちらの楷書体となります。行書よりも字が崩れていないため、読みやすいのが最大の特徴です。一画、一点を続けず、丁寧にバランスよく書くことから、安定感があり美しい字形とされています。

まとめ

書道やペン字を習っていくと、さまざまな専門用語や書体に出会います。これらについてよく理解しておくことで、文字を書く際のモチベーションが上がりますので、ぜひ参考にしてください。

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